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タブラ奏法入門 (講座の一部ご紹介)
1.各部の名称
2.構え方
3.音出し
4.チューニングの方法
5.練習パターン
6.Kaida
7.Tihai
8.Theka
9.Tukda
10.Rela
11.Lahara
*注意/このページに使われている曲は、内容説明のため、伝統に従いながらも新たに作ったものです(Thekaを除く)。曲、画像、説明文の全著作権はわたくしにあり、一切の転載を禁じます。講座案内[サンプル動画]も見られます
*多くの呼び方があり、その一部を紹介します。
タブラ Tabla/アラビア語の「太鼓 Tabl」に由来。タブラと言った場合、この右側に置く方を指す時と、左右ふたつの太鼓の総称で呼ぶ場合があります。特にこの太鼓を指す時は「ダヤ Daya=右」とも呼びます。シーシャムウッド(紫檀、黒っぽい紫、または茶)で作られたものが質が高く、重く割れにくく、よく鳴ります。(ニームウッドは軽く、少し割れやすいが廉価。不透明の塗料が塗られているものは多くがこれ。)鼓面の口径は5 & half inchが標準。Dの音が出せます。
*タブラの構造については「Tabla タブラについて」の[構造]に詳しく書かれていますので参照して下さい。
バヤ Baya/左の意。普通左側に置きます。左利きの人はダヤとバヤの置き方が逆となりますが、呼び方は変わりません。銅製のもので4kg以上くらいあるものがいい音が出ます。クロムとかのメッキが施されていますが、ないものもあり、また表面に凝った形象が彫刻、プレスされているものもあります。他に鉄製、真鍮製、アルミ製などありますがどれも軽いため、余り良いものとは言えません。素焼きのものは安価でありながらもいい音が出ますが、ただ壊れやすいという欠点があります。鼓面の口径は9inchまたは9 & 1/4inch。図にはありませんが、バヤにも細いグリを挟むことがあります。
*音の良し悪しを決めるのは、胴本体の材質だけではありません。張る皮(ヤギの皮)の材質や厚さ(薄いほどいいが破れやすい)も大きく音を左右し、また、当然職人の腕が最も大事とも言えます。ガブを作る技術は特に大切。
*ハトリ(チューニング用ハンマー)は必ずタブラ用のを用います。
鼓面の名称/タブラ、バヤとも共通で3つの部分に分けられます。一番外から順に、キナールKinar、シュールSur、ガブGabと呼び、略記号で表す時はそれぞれの頭文字を取って(K)(S)(G)です。キナールというのは端のことで、皮が2重になっている部分です。
あぐらをかいて座りますが、余りひざが前に出ては邪魔をしてしまいます。脚を深く組むのではなく浅く組んで、左右の足首が上下に重なるぐらいの感じがいいと思います。(普通のあぐらと違い初めこの形は痛く、苦しいかもしれません。我慢してやり続けると股関節炎を起こす時がありますので、無理をしないように。)
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bol(ボール)について ボールとはタブラで使う各種の音を口で音真似をしたもので、はっきりと言葉(bol)、記号として扱われるので、曖昧な発音はなく、ほぼ一対一でボールとタブラ音は対応していて、20数種あります。(このボールの組み合わせでタブラ演奏はできています。これによってどんな演奏でも文字として書き表すことができるので、保存や伝達に大変便利であり、伝授は全てこれによって行なわれます。
各種音出し
[ tablaの音 ]
[na]または[ta]/まず、右手薬指の先端をガブの円周部に当てます。どれぐらい当てるかは流派(ガラナ)による違いがあるようですが、本当の先端だけというより多少ガブの中に入り、指の腹を当てる感じにします。この薬指の先を支点として、回転運動で人差し指の第一節部(末節)をキナールに打ち付けます。(この練習の時、ガブを手汗で溶かしてしまいがちです、必ずパウダーを指先、特に薬指につけるようにします。)
tun/人差し指1本でガブの手前側を力を抜いて軽く打ちます。指先が着いたままだと鳴りません。力を入れず、自然に跳ね返るようにしますが、手そのものを持ち上げてはいけません。
[tete]/親指を除く4本の指を、人差し指1本と中指、薬指、小指の3本の2つに分けます。初めの[te]は中指薬指小指の3本でガブを打ちます。中指の第一節がガブの中心になるようにし、他の2本はばらけないようきっちりと揃えます。次の[te]は人差し指1本でまた中心を打ちます。
[ Bayaの音 ]
[ke]/ガブの上に手の平を乗せ、指先がキナールの外周に触れるように置きます。そして、手首の下部分を鼓面に付けたまま振り上げ、手の平全体でうち下ろします。
[ghe]と[ge]/左手をぐっと起こして、手首をガブの手前側の円周上に乗せます。中指と薬指を揃え(小指も揃えますが、短いので指先は当たりません)、高く掲げた状態から瞬間的に指先で皮面を「掘る」ような感じで、ガブの1センチ先あたりを打ちます。ガブに近い方が、小さな力で大きく鳴りますが、決してガブを打ってはいけません。打った直後、皮が反動で上がって来る前に指先は内側に逃げます。逃げる途中で皮に当たってしまうと、振動は止まり音も止まってしまいます。ただそのとき、強く手を握るような打ち方をしてはいけません。次への動きが遅れてしまいます。また、爪の先でガブを引っ掛けると、ガブが剥がれ、ボロボロと崩してしまう事になります。
同じ動きを人差し指1本で行なうと[ge]となります。
[ 両方同時の音 ]
合成されたボールは、[ghe]と同時に打てばタブラ側のボールに「濁点」と「息漏れ」がつき、[Ke]と同時に打てば「息漏れ」だけがついたボールに変化します。中には例外もあります。
[Dha]/タブラの[na]とバヤの[ge]を同時に打ちます。その合成音を[Dha]と言います。最も重要な音として使われます。特に強く打つ場合は[ta]と[ge]を打ちます。Tihaiの最後などはこれを使います。つづりの中にある「h」は、インドの言葉で重要な「有気音=帯気音」と呼ばれるもので、「ハッ」と息漏れを伴う発音です。また、[na]と[ke]を同時に打つと[tha]となります。
[DhinとThun]/タブラの[tun]とバヤの[ge]を同時に打ちます。[ke]と同時に打つと[Thun]となります。
[ 基本パターンの練習 ]
[terekete]/タブラと言えばこの「テレケテ」(ベンガルの言い方。ヒンディーならば「ティラキタ」)と思える程よく出ます。これをもしゆっくりと強くひけば「テテカタ」となりますが、速くなると言いにくくなりますので、TをRに置き換えた形にし、舌を動かしやすくしています。始まりと終わりのボールが同じ指なので、このボールのみを繰り返す時、同じ指を続けて打つことになり、その点が少し難しくなりますが、スムースに打てるよう練習します。
[tun-na]/このとき問題になるのはnaの音です。tunの鳴っている時、続いてnaを鳴らそうとすれば、薬指をガブに置く事になります。するとtunの音は消え、美しく鳴り響く感じが無くなりつまらなくなります。そこで、薬指を先に付けるのではなく、手を持ち上げた状態から、下に落すような感じで[na]を打ちます。薬指は少し早くガブの上に着地します。[na]が鳴り始める直前まで[tun]が続くようになります。
[te-ta]/ここに出てくる[ta]は[na]のことです。しかしここで問題が起こります。[te]と[na]では薬指の位置が違います。すぐには叩けません。そこで薬指を軽くガブに付けたまま、すっと手前に引きます。すると、丁度ガブの周縁部に来ると思いますので、そこで止めて[na]を打ちます。
[na]音を円周ぐるりと回して出してみて、低い所があれば、ハトリを使って音を上げます。その叩き方は、打って鳴らした箇所、人差し指の第一節の直近のガジャラーを上から叩いて音を上げて、高い方の音に合わせます。このとき革紐チョールの上を強く叩いてはいけません。やがてそこが薄くなって切れるもとになってしまいます。反対に低くしたい場合は下から叩き上げます。
この方法は簡易的であり、一人で練習する時などに使います。ある音に合わせて合奏をする時などは、その楽器の主音に合わせます。チューニングメーターで合わせるのが初めはいいと思います。普段なら[B]か[C]ぐらいではないでしょうか。
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1.|tere|kete|Dha-|Dha-|
|tere|kete|ta- |ta- |
2.|Dha-|tere|kete|Dha-|
|ta- |tere|kete|ta- |
3.|Dha-|Dha-|tere|kete|
|ta- |ta- |tere|kete|
カイダとは「規則」という意味であり、主題となる、ある特徴を持つボールパターン(No.1で提示され、ムクMukhと呼ばれる)を次々と一定の規則を保ちながら変奏して行くもので、必ず2行一組となっています。
Kaida1
×
1. | Dha s ge ge | na go Thin s |
○
| Ta s ke ke | na go Dhin s |
[ s ]の記号は休符を表します。または伸ばすと考えます。西洋的な意味の「音の休み」ではないので、特に音の響きをミュートしたりはしません。この記号は「ア」と発音します。リズムが取りやすくなります。
|は小節線で全体は4小節でできています。各小節の時間的長さは皆等しくなっていて、それぞれ4拍ずつ入っています。このBolをカタカナで表すとすれば|ダ ア ゲ ゲ | ナ ゴ ティーン |タ ア ケ ケ|ナ ゴ ディーン|となります。
[gege]は1、2とひきます。つまり初めの[ge]が人差し指、次の[ge]が中指ということです。[go]は[ge]と同じことですが、人差し指で打ちます。
Palta(パルタ=変奏)
×
2. | Dha s gege | nago gena | + No.1( | Dha s gege | nago Thin | 以下同じ)
○
| Ta s keke | nako kena | + No.1( | Dha s gege | nago Dhin | 以下同じ)
変奏は必ず、1番で用いられているボールだけを材料として行ないます。
×
3. | Dha s Dha s | gege nago | + No.1
○
| Ta s Ta s | keke nako | + No.1
×
4. | gege na s | gege nago | Thin gege | nago Thin |
○
| keke na s | keke nako | Thin gege | nago Dhin |
Tihaiとは3回繰り返すことで、終止のパターンです。KaidaのPaltaの終わりにひき、3回目の最後の音が次の周期の始まりの音と重なるようになっています。ここでは別の項目になっていますが、演奏を1度切るのではなく、上の続きで次のティハイをひきます。
Tihai
×
| Dha s gege | nago Thin | Dha s s s | x 3
1 2 3 4 5 6
テカとはリズム周期を示すために打たれるパターンです。インドには多くのリズム周期がありますが、それぞれに決まった叩き方があり、それを伴奏として聴きながら、演奏家は旋律を歌ったり奏でたりします。
Teentaal Drut Laya Theka
×
| Dha Dhin Dhin Dha | Dha Dhin Dhin Dha |
1 2 3 4 5 6 7 8
○
| Dha tin tin ta | ta Dhin Dhin Dha |
9 10 11 12 13 14 15 16
1拍目は大変重要で、サムSam(合流、合う)と呼ばれ、×または+の記号が頭の上につけられます。
第3小節の頭、9拍目はカーリKhaliと呼ばれ、空拍を表し、○印がつけられます。
このテカを完全に覚えたら、まず、テカを1、2度ひいて、その後、先ほどのカイダをひくようにします。No.1を1回ゆっくりひき、その後、倍速で2番3番とやり、そして、ティハイで終わって最後の[Dha]がテカの1拍目になるわけですから、続けて[Dhin Dhin Dha]とテカに戻ってひきます。
トゥクラは短い作曲作品です。
| Ta s te s | te s Ta s | Ta te te Ta | ( tere kete Dha Dha | Dha s s s ) | x 3
レーラ、レラは速い連続音のパターンです。
1.| Dha Dha Dha tere | kete taku tere kete |
| Ta Ta Dha tere | kete taku tere kete |
2.| Dha Dha Dha tere | kete Dha tere kete |
+No.1( | Dha Dha Dha tere | kete taku tere kete | 以下同じ )
| Ta Ta Ta tere | kete Ta tere kete |
+No.1( | Dha Dha Dha tere | kete taku tere kete | 以下同じ )
3.| Dha Dha tere kete | Dha Dha tere kete |+No.1
| Ta Ta tere kete | Ta Ta tere kete |+No.1
4.| Dha Dha s Dha | tere kete Dha Dha |+No.1
| Ta Ta s Ta | tere kete Ta Ta |+No.1
Tihai
| Dha tere kete taku | tere kete Dha Dha | Dha s s s |×3
*トゥクラ、レーラ共にカイダの時と同じように、よく練習をした後、演奏としてひく場合はテカをひいてから演奏し、またテカに戻ります。レーラはNo.1をゆっくり1回ひいた後、倍速でひき、ティハイをやって、サムに到達して、またテカに戻ります。
Laharaはリズム周期を示すために作られている旋律です。サーランギ、またはハルモニアムで演奏されることが多く、タブラソロをやる時、横に居て、テンポとリズムの周期を奏者及び聴衆に示します。
Raga Chandrakauns
× ○
| g m d N | S’ S’ S’ NS’ | d N S’ NS’ | d m g S |
インドの音階はSa Re Ga Ma Pa Dha Ni S’aで表されます。ドレミの表記と似ていて、楽譜として書く場合、母音は省略されます。Maをmと小文字表記にして、他を大文字にすると西洋の長音階になります。半音下げる時は小文字にし、mのみが半音上がった音Mを持ちます。主音のSと5度上のPは変化しません。本来は他の印をつけて半音を表しますが、ここではこう表記します。1オクターブ高い時は文字の後にダッシュを付けます。1オクターブ低い時は文字の前にダッシュを付けます。それで表したのが上の譜です。このChandrakaunsチャンドラコーシュ(チャンドラは月のこと)は5音音階であり、その音階上の音は[ S g m d N S' ]となります。ティンタールですから4つの小節があり、それぞれが4拍でできています。Samサムの位置は2小節目の頭にあり、主音になっていて、タブラとの一致感が高まります。初めの小節の4拍は、サムを導く働きを持っています。